「アミノ酸スコア」は組み合わせによって100になる……について

食品に含まれる必須アミノ酸の量とバランスを考える時に出てくるのが

「アミノ酸スコア」

という基準です。

アミノ酸スコアとは、

「食品中の窒素1gあたりに占める必須アミノ酸が基準値と比較してどれだけ含有されているかを計算した上で、第一制限アミノ酸の数値を評価値とする方法」

……って、ちょっと何言ってるか分からないんですけど.

とりあえず「第一制限アミノ酸」というのは要するに、その食品に含まれている必須アミノ酸(9種類ある)の中で、

「最も含有率が足りないアミノ酸」

という意味ですね。

これは、体内でタンパク質が作られるときに、それに必要となるアミノ酸のうちのどれか一種類でも足りなくなったら他のアミノ酸がどんだけたくさん余っていようが、それ以上タンパク質を作ることはできない……という理屈に基いています。

つまり、工場でどれか1種類でも部品の納期が遅れたら、他の部品がどんなに多くあっても製造ラインが止まってしまうよ……みたいなことですね。

【アミノ酸の桶理論】

第一制限アミノ酸というのは、いわば一番先に足りなくなりそうな部品ってことです。だからまずそれが重要視されるわけです。

では、その「含有率」というのが問題なわけで……でもその含有率というのは、もともと決まっている基準値に対する率なので、ということはその前に「基準値」が問題になります。

各必須アミノ酸の必要量は、単純に全部同じ量であればよいというわけではなくて、結局、どのアミノ酸がどれくらいの量だったら「バランスが良い」と言えるのか……というのを表すのが基準値ですよね?

つまり何をもってバランスが良いと言えるのかが問題なわけです。

基準値の決め方がそもそも大切なのです。

ということで、初めて食品中のアミノ酸の評価基準が提案されたのは1957年(FAO:国連食糧農業機関による)で、その時の基準による評価方法を

① プロテインスコア

と呼びます。その時の基準値の決め方は……分かりやすく言うと

「とりあえず、卵とか乳ってたぶん、アミノ酸バランス理想的だよね?」

ってことでした。つまり鶏卵、人乳、牛乳といった典型的なタンパク源のアミノ酸組成を調べて、それを基準値としていました。

その後、1973年(FAOとWHOによる)に新しい基準が出されましたが、それは

② ケミカルスコア(化学価)

と名付けられましたが……それが今

③ アミノ酸スコア

という呼び方になって広く定着しているものです。

いずれにしろ、この時にさまざまな研究データをもとに一応化学的に妥当と言える「アミノ酸評点パターン」というのが作成されて、それに基づいて基準値も決定されました。

その後、年代による必要量の差とかアミノ酸量の測定方法などの詳細な点が修正、改善されつつ今に至りますが、基本的にはこの方式が現在まで踏襲されているのです。

【1985年、FAO/WHO/UNUによるアミノ酸評点パターン(mg/gN)】

ヒスチジン 120
イソロイシン 180
ロイシン 410
リジン 360
メチオニン/シスチン 160
フェニルアラニン/チロシン 390
スレオニン 210
トリプトファン 70
バリン 220

上記の数値は、食品中の窒素1gあたりに占める必須アミノ酸の量をmgで表したもの(mg/gN)です。

ただ、最初にも書きましたが、化学的には最も妥当で正しいから良いんでしょうけれども、私なんかは「窒素とアミノ酸って、何の関係があるの?」……とちんぷんかんぷんな感じなので、

「……ちょっと何言ってるか分かんない」

ってことになるわけです。

なので、これを「タンパク質1g当たりに含まれる必須アミノ酸の量」に換算した評点パターンのほうがまだ理解しやすいです。

【タンパク質1gに含まれるアミノ酸の量/成人の場合】

ヒスチジン 16
イソロイシン 13
ロイシン 19
リジン 16
メチオニン/シスチン 17
フェニルアラニン/チロシン 19
スレオニン 9
トリプトファン 5
バリン 13

これなら、実際に摂取するタンパク質1gごとに含まれるアミノ酸(mg)という意味ですから、私でも少なくともイメージはつかめます。

……と言っても、プロテインといった人工的に作られたサプリメントならまた別ですが、ふつうは100%タンパク質だけでできている食品なんてこの世にありません。

上の数値はあくまでタンパク質1gに含まれるべき量なので、たとえば単純に「牛肉1g」とか言うのとはわけが違います。

アミノ酸の実際の量を考えるにはまずその食品に含まれている蛋白量がどれくらいなのかも知る必要があります。

ところで、この評点パターンそのものは現在まで踏襲されていますが、そこから導き出されるアミノ酸スコアの算出については、今度は単にその食品が含有しているアミノ酸の量ではなくて、その食品に含まれているたんぱく質の消化されやすさ、つまり「吸収率」が食品ごとに異なることも考慮しないと意味ないじゃん……という話になりました。

つまり本当は、食品に含まれている量じゃなくて実際に体内で吸収できる量のほうが問題なわけですからね。

その観点から修正されたアミノ酸スコアが1993年(FAOとWHOによる)に発表されました。これは

③ PDCAAS(たん白質消化吸収率補正アミノ酸スコア)

と呼ばれます。

アミノ酸スコアって本当に意味があるのか?

ということで、とにかく理屈としては

「理想的なアミノ酸のバランスはこうだ!」

という基準値(評点パターン)があって、それとかけ離れて特定のアミノ酸(第一制限アミノ酸)の含有量が少ないほどその食品のアミノ酸スコアは低くなっていく……ということになっています。

もし、ある食品の必須アミノ酸の全種類が評点パターンよりも多く含まれているなら、それは制限アミノ酸が存在しない食品という意味であり、その食品のアミノ酸スコアは「100点」となります。

……ということです。

分かりましたか?

「でもさ……?」

私、ちょっと疑問に思っちゃったんですが。

「……だから何なの?」

だってだって。私思うんですけど……。

① じゃあ結局は何をどれだけ食べればいいんだ!

私たちが知りたいのは主に「どのアミノ酸をどんだけ摂取すれば健康に良いか」ということなんですけど、それはアミノ酸スコアには直接表れてこないんです。

理想的なバランスだったとしても、全体的にアミノ酸の量が足りてるかどうかは別の話じゃないですか。アミノ酸スコアは「バランスの良さ」だけを点数で表すから、それだけ言われても量が十分なのか分からないのです。

それに、アミノ酸スコアとはつまりは「第一制限アミノ酸の点数」なのであって、それだけでは、何が足りていて、何が過剰になるのかとか、ぜんぜん分からないのです。

それを知るには結局アミノ酸スコアという、結果的に示される「点数」ではなくて、それがその点数である理由というか、その点数になった計算の過程というか……要するに結局はもっと細かい成分表を見なければ意味なくないですか?

それに、

② 問題は、食事全体でどうなのか、でしょ?

アミノ酸スコアは、単なる特定の一つの食品のアミノ酸バランスの点数にすぎません。

実際に私たちは、大豆なら大豆とか、そのたった一つの食品だけを食べ続けるわけではないんで……ふつうに食事していたら、その食事に入っている全部のアミノ酸の量が問題なのであって、それって結局はもっと細かく計算しないと、アミノ酸スコアだけ見ててもぜんぜん分からないんです。

私たちはアミノ酸スコア100の食品だけでメニューを決めるわけじゃないし。

よく、説明には

「アミノ酸スコアが低い食品でも、組み合わせて同時に摂ることでアミノ酸スコアは100になります」

って書いてあるんですけど、その組み合わせを考えるにあたって……アミノ酸スコアが何の役に立つの?

アミノ酸スコアが「50」の食品を2種類食べたら「100」になる……というんだったら、そりゃ役に立つだろうけれども(笑)

結局それって、それぞれの食品にどのアミノ酸がどれくらい入ってるか具体的に見ないと分からないじゃないですか。

……じゃあ、アミノ酸スコアっていったい何に使うの?

むしろ見るべきは「評点パターン」?

ということは、たとえばどんな食材を組み合わせて料理したらアミノ酸バランスが良いとか……そういう具体的なことを知るには、アミノ酸スコアそのものというよりも、結局、理想的なアミノ酸バランスのひな型であるところの

① 評点パターン

のほうが重要ですよね。それと、実際に食べる食品それぞれの具体的なアミノ酸の含有量、つまり

② 成分表

です。その両方を見比べならが

「うん、この組み合わせは良い。このメニューをどれくらい食べるのが理想」

とか言って具体的に確かめないと、自分はどのアミノ酸が不足気味で、どのアミノ酸は過剰で……なんてことは分からないんじゃないかな?