ふぐの毒はどこにある?食べてはいけない部位

ふぐと言ったらまずヒレ酒と河豚皮の湯引きに始まり「てっさ」から「てっちり」。

河豚は俗称「てっぽう」なので、てっぽうの刺身を略して「てっさ」と呼びます。どうして鉄砲と言うかって、ご想像通りタマに当たったら死ぬからですよ。

それからお好みで「唐揚げ」や「塩焼き」に、運よくお目にかかれれば「白子」も行っときましょう。

ふぐの種類は意外に多い

多くの店舗でフグと言えば「トラフグ」です。

数あるフグの中でも「フグの王様」と名高い、最も高価で美味とされるフグですね。

以前ははっきり言って超高級食材でしたが現代では養殖技術が発達したため比較的手ごろな価格でも提供されています。

天然のトラフグは冬が旬ですが、養殖のほうは通年流通しており、技術の進歩によって品質もよく供給も安定しています。おかげで最近だとむしろトラフグのほうが一般的で、その他の種類のほうが見る機会がほとんどないという感じですよね。

とらふぐ以外となると、次いで味が良いとされる「フグの女王」マフグ。でもこちらは養殖がないのでなかなか出会えません。他にもシマフグ、クサフグなど日本で食用が認められている種類だけでも20種類以上あります。

さらに……それ以外にもホシフグ、ムシフグ、キタマクラなど、その数なんと100種類以上あり、多くは身そのものにも毒があって食用にする部分がまったくない種類や、そもそも毒性がはっきり解明されていない種です。

これらの食べれないフグですが、釣りをしているときにけっこうひんぱんにかかるものもあります。しかも食用できる種と見た目が酷似しているものもあります。

また、天然のフグは種類によって毒のある部位が異なります。それに同じ種類であっても獲れる地域や季節によって毒があったりなかったり、毒の量が変わったりします。

とにかく素人判断で食べてみるなんてもってのほか。命は大切にしましょう。

フグの毒

ごく一部にはこれ以外の別種の毒を持つフグもいますが、ほとんどのフグが持つ毒はテトロドトキシン」と呼ばれるものです(って言うか、この名称自体がフグの毒という意味です)。

ご想像の通り、この毒ははっきり言って「猛毒」です。一般に、フグの毒に当たった場合の致死率は5.7%と言われています。

その毒性はよく青酸カリと比較されますが、青酸カリの致死量は0.2グラムです。しかし、テトロドトキシンの毒性はその約1000倍と言われています。

……と言ってもイメージ湧かないのでですね、つまり私たちの日常の感覚で言えばですね

「あ、ごめん、ちょっと付いちゃった」

レベルで即死という感じです。

またこのテトロドトキシンの厄介なところは、300℃以上になっても分解されないということです。つまり多くの他の毒性物質や細菌とは違って、フグの場合は通常の料理の範囲でいくら熱を加えようとまったく毒は消えないわけです。

だからこそ厳重な管理が必要なのですね。

当たったらどうする?

役に立つかどうかは微妙ですが……気持ちだけでも安心するために、万が一フグを食べて当たった場合どうなるかを一応イメトレしておきましょう。

まずテトロドトキシンという毒は非常に強いものですが、でも、たとえば濃硫酸のように直接に体内の組織や器官をぶっ壊すような種類の毒ではなく、神経麻痺を起こすものです。

よって、誤って微量でもテトロドトキシンを摂食してしまったら、早い場合では数分後から唇辺りにしびれを感じ始めます。あるいは数時間経ってから症状が現れることもあります。そこからどんどん広がるように麻痺が起こり、結局呼吸器が麻痺してしまうために呼吸困難になって最悪の場合そのまま死亡(多くは24時間以内)……ということになります。

ですから、まずはちょっとでも異常を感じたらしばらく様子を見るとかもったいないからとりあえず全部食べちゃうとかじゃなくて……すぐに救急車です。

ただし、テトロドトキシンの解毒剤はいまだ開発されていません。なので処置としてはとりあえずなるべく毒を吐かせ、胃の内容物を排除するか利尿剤などで強制的に排泄させるということになります。そして最終的には脈拍や呼吸の停止を回避するために人工呼吸器などで呼吸を確保したりして毒の作用が消えるのを待つしかありません。

……触らぬ神に祟りなしと言いますが、さりとてフグは喰いたし。

こう考えてくると怖い気持ちもしますが、でも実際のところ日本で発生しているふぐ毒による死亡事故はほぼすべてが

・一般の人が自分で釣ったフグを自分で捌いて食べた場合

・フグの専門知識のない無資格のお店などが勝手に出した場合

に限られます。

当然ですが、ふつうに常識的に考えて、ふぐを専門に扱っているお店が「一番やっちゃいけないことは何か」ってだれでも考えれば想像つきますよね?

ですから、いわゆるきちんとした「ふぐ専門店」では当然人一倍神経質になっているに違いありません。ということは、まず安心してよいかと私は思います。

また、当たり前と言えば当たり前ですが、スーパーなどで販売されているフグはもちろんあらかじめ毒性部位は完全に除去されています。

ただし……ふぐ免許というのは全国で統一の基準があるわけではなく、実は各自治体がそれぞれに規制しています。資格取得条件や取扱時の規制について、ごく厳しいところもあれば、比較的緩いところもあるわけです。どことは言いませんが、実技試験がなく単に講習を受けるだけで免許が取得できてしまうところもあるらしいです。

ちなみに、東京はふぐ調理免許の条件が比較的厳格と言われていますが、平成24年から、あらかじめ有毒部位を除去してあるものについては資格のない人も調理してよいことになっています。

あとはあくまでご自身の判断ですが……とはいえ、食べたいものは食べたいですよね?

トラフグの場合、毒のある部位

繰り返しますがフグは種類がたくさんあって、それぞれに毒のある部位が違います。地域によっても違いますし、同種でも変異したものなど個体によって特殊な例もあるため、素人判断で勝手に調理したり、食べてしまうのは非常に危険です。ここで言うのは典型的な「とらふぐ」の場合のことなので、間違えないように注意してください。

・血液

まず、フグの毒は血液中にあります。ということは要するにフグの全身に回っているということです。なので、もちろん身の部分も完全に血抜きしなければなりません。

フグのお刺身「てっさ」というとふつう菊型に並べられた薄造りのものを思い浮かべますよね?

当然、真っ白ですよね?

もちろん、フグの身は脂質が非常に少なく、繊維質が多いのが特徴で、いわば全部が筋肉みたいなものなのであのように薄切りにしないと歯ごたえがありすぎて食べにくいのです。

人によってはふぐ刺しはあんまり味がしないという方もいらっしゃいますが、脂質が少ないのにグリシン、リジンなどの旨み成分が非常に多いので、それがフグ独特の上品な味を作り出していると言えます。

いずれにしろ、フグは真っ白、これ大事ですね。

・内臓

血液とともに、当然内臓部分にも毒が流れており、特に肝臓部分は毒が蓄積される箇所なので絶対食べちゃダメ……なのですが、そうは言いつつ昔から

「フグ肝は舌が痺れるほど美味しい」

などと言われている不思議。

実は、養殖技術が進歩した今、完全に無毒化された養殖フグの肝を解禁しようという動きもあるのです。

現在までのところ、完全に無毒だという立証が技術的に困難というのが厚生労働省の見解。また、市場における混乱や間違った情報による事故の増加の懸念などから実現には至っていません。

ただ、推進している佐賀県の側としては、陸上の隔離された養殖場で完全な管理下において飼育した場合、テトロドトキシンをまったく持たないトラフグを育てることは可能であるという意見のようです。

ちなみに、まだ定説とは言えないようですが、フグの毒というのはフグ自身が作り出しているわけではなくて、フグが食べる餌に含まれている毒が堆積したものだという説が有力です。だから、理屈としてはそもそもそういう毒を持っている餌さえ食べなければ、フグ自身は毒など持っていないということになるわけですね。

いつか、安心してフグ肝なるものを食べられる時代が来るのかもしれませんが、実現にはもう少し時間がかかりそうです。

・卵巣

卵巣にも毒があります。なので通常ふぐ専門店などで卵巣部分が提供されることはありません。

ただし、個体ごとに検査をして毒の含有量が基準以下だと確認されたもののみ販売が許可されていますので、どうしても食べたければ探せば見つかるかもしれません。

間違いやすいのですが、精巣のほうには毒がありません。フグの精巣(白子)は食通にとっては究極の美味の代名詞とも言える絶品です。

ただし、100g当たりに300㎎の高プリン体食品の代表格でもあります。

まあ、希少部位として扱われ(当たり前ですけどオスにしかないし)、専門店でも常にあるとは限りませんので、どっちみち食べ過ぎるというような心配はほとんどないわけですが……。

しつこいようですが、自分でフグを捌いて、精巣と卵巣を間違えて食べて死亡……みたいな事故が実際あるようです。また、トラフグなどは大丈夫ですが、食用に供されるフグの中でもヒガンフグ、クサフグ、コモンフグ、サンサイフグといった種類は精巣にも毒を持つのでくれぐれも間違いのないように気を付けましょう。

フグの第二の毒、ホルマリン

実は、テトロドトキシンほど猛毒ではないですが、かつて主に養殖ふぐなどの寄生虫対策のために使用されていた「ホルマリン」が問題になったことがあります。

そもそもフグがどうして毒を持っているかというと、有力な説は自分の身を寄生虫から守るためです。それなのに、毒を堆積させないように管理された中で育てられると、ある意味、寄生虫が入り放題になってしまうわけで、これでは養殖ができません。

そこで、かつて養殖業者の多くがフグをホルマリンの中に入れて殺菌していたのですね。ホルマリンというのは発がん性物質で、そのようなことをすれば相当程度フグの体内に残留してしまいます。

これが一時大きな問題になったことがあるのです。

しかし、現在、国内のほぼすべての養殖業者が自主的にホルマリンの使用をやめています。

ただ……実はこれはあくまで業界側の自助努力によるものです。法律などによる公式の規制はいまだにないのです。

ちなみに、近年は輸入ふぐ(ほとんどが中国産)も大量に出回っており、その中にはもちろん養殖のものもあります。現在、輸入量自体は減少傾向にあるようですがピーク時には国内のフグ流通量の過半数を輸入に頼っていた時期もあり……あとはご自身の判断にお任せします。