朝は空腹であることが重要、朝食はとらないほうがいい説

従来の常識で言えば、

「朝食をしっかりとることの良さ」として

① 消化器系を刺激し、便通をよくする
② 脳の活動に必要なブドウ糖をすみやかに補給できる
③ 基礎代謝が活発になり、体が目覚める
② 夜間~深夜にドカ食いするというような悪い食習慣になりにくい

といった利点が強調されてきました。

しかし、最近は逆に

「朝食は摂らないほうが健康に良い」

とする意見も少なくありません。

朝食の効果、どう考える?

私自身も子供の頃から親から、また特に学校でしばしば言われてきました。

「朝ご飯をちゃんと食べなきゃダメ」

って。

しかし、今考えると……これは少なくとも子供に対する教育的な見地から考えれば良いことではあるけれども、大人になって以降、特に中高年から先の多様なライフスタイルにとっては、必ずしも当てはまらない可能性もあるのではないかと、考える余地はあります。

本来の人間の生理機能では午前中は「排泄時間」にあたり、体内の清掃を促がすホルモン「モチリン」が食事をすることによって停止してしまうため、むしろ朝食をとることは控えたほうが良いという考え方もあります。

「モチリン」は小腸や十二指腸から分泌され、空腹期伝播性強収縮、つまり「お腹が鳴る」という現象を引き起こすホルモンです。

この運動は胃や腸に残った消化後の食物や内臓壁に付着している細胞や分泌物の残骸などを掃除するために引き起こされるものと推測されます。

ただし、モチリンが分泌されるのには一定のリズム(おおよそ90分周期)があって、一定時間空腹の状態が続かなければ、つまり少しでも何かを食べた瞬間に分泌は停止されてしまうのです。

これを胃腸内の清掃をするために必要な運動と考えると、毎日一定時間「食事を摂らない時間」を確保することが有効と考えられます。すると、しばしば指摘されるように

① 夕食は早めに摂り、その後就寝まで何も口に入れない

というのがひとつの理想形となるわけです。そして、それを実行すれば必然的に

「朝はお腹が空く」

のだから、しっかり食べなきゃダメ……という、これは理屈に合致しているように見えます。

学童期くらいのお子さんの場合、これは特に学校生活に慣れ、それに合わせた生活リズムを保つ上で確かに有効なパターンと考えられます。これは健康面に限ったことではなく、精神衛生や社会性といった面での教育的見地から見ても妥当という気がします。

ただし、大人になるとどうしても現実の社会生活、特に仕事などの社会的活動、経済活動の必要性や、関わる身近な人々との人間関係といった面で様々な制約が出てきます。

そうなると、必ずしも上記の「理想形」を維持するのが困難になるでしょう。

私自身も、実際のところ勤務を終えて帰宅できる時間が早くても午後11時。少し遅れると日付が変わってしまいます……となると、もしそこから風呂に入り食事をして寝る、という場合どう考えても深夜1~2時になることが避けられません。

もちろん、もっと大きな視点で言えば、そもそもそういう仕事や労働環境そのものを改善していくとか、それはそれで問題とも言えるわけですが……だからと言って、それが改善されるまで不摂生な生活をそのまま続けていることが一番よろしくないわけですよね?

ですから、ある程度の年齢になったら、自分なりの志向や価値観、それに制約条件などを踏まえた上で、それに整合的な生活スタイルを積極的に構築していかなければならないわけです。

主要な問題は「空腹時間の確保」なのでは?

「早寝早起き」
「早めの夕食」
「朝食をしっかり摂る」

この「理想サイクル」の意味をあらためて考えると、ここで主要なポイントとされているのは要するに、一日の中で一定の

「空腹時間を確保すること」

だとも考えられます。

たとえば、かつて欧米で流行した

「ナチュラル・ハイジーン運動」

では、早朝から正午までは「排泄」に当てるべき時間帯とされていて、果実以外の食物を摂らないことが推奨されています。

【ナチュラルハイジーンによる一日の周期の考え方】
午前4時-正午   「排泄」の時間
正午-午後8時   「消化」の時間
午後8時-午前4時 「吸収」の時間

空腹時間をできるだけ確保するという観点で自分の一日のサイクルを見直すと、個人によってはむしろ朝食をあえて抜くほうが理に適っているケースもあり得るということになります。

その他、朝食についてよく指摘される点、たとえば

【朝食、昼食、夕食の量的なバランス】
朝食は消化の早いものをできるだけたっぷり
昼食は比較的自由
夕食は早い時間帯に軽めに
というようなもの。

【一日3食、規則的な食事】
そもそも朝食を含めて3食きちんと食べること
できるだけ食事時間を毎日同じにする

【朝食に適した栄養素】
まず脳にブドウ糖を補充する
体内時計の維持調整のために糖質とタンパク質

……今の考えに沿って言えば、これらのポイントは、何も

「朝食を食べるという習慣」

そのものとは直接には結びつかないとも言えます。つまりこれらは、朝起きてすぐに食事を摂ることによってしか実現できないこととは言えません。

自分のライフサイクルを安定させる中で、それに合致した形で可能なことを取り入れていくほうが現実的で妥当な気がします。

朝食と生活習慣病との関係

中高年として特に意識せざるを得ないポイントとして、高血圧や糖尿、高脂質症といった生活習慣病への影響の問題があります。

血糖値について言えば、常識的には朝食を摂る習慣があると食後血糖値を抑制しやすい体質になりやすいと言われています。

体内時計が乱れてくるとⅡ型糖尿病をはじめ肥満、心疾患などのリスクが上昇します。そこで、特に朝食というのはふつう睡眠後、つまり比較的長い空腹時間の後のタイミングで摂る食事にあたるので、いわば体内時計のリセットのような役目を負っていると考えられます。

だから、朝食を必ず取るような生活リズムが理想とされるわけです。

もちろん理想を言えばそうなのですが、前述の通り時間的な制約があって無理な場合もあります。その前提で考えると、実は血糖値のコントロールについてのポイントは

① そもそも意識的な食生活のコントロール

第一、朝食を抜く生活を送っている人は、往々にして自分の食生活などの習慣をコントロールする意識に欠けるところがあるから、血糖値を上昇させるような生活習慣を改善できない、という認識があるものと思われます。

あと、やはり

② 夕食に比重が偏ってしまう

という懸念であり、それが悪い理由は

③ 一度に大食いする傾向になりやすい
④ 食後に消化に要する時間を確保できない

という点が大きなポイントです。

血糖値の観点から言えば、食事のタイミングと食事量のバランスを一定に保つことが重要ですから、こういう傾向を避けるために「朝食重視」という考え方が出てくるわけです。

これを裏面から見ると、そもそも重要なのは食事の時間と量のバランスを「ならす」ことなのであって、単に朝食を食べることが即重要なのではない、という考え方もできます。

睡眠時間との兼ね合いもありますが、この前提だと単純に言って一日2食よりは3食のほうがベター(というか、それならば一日4食のほうが理想的とも言える)ということで、たとえば

朝食は抜くが、昼食、夕食、夜食と毎日同じ時刻に取り、昼食の比重を若干大きく保つ……とかいう方法でも今よりはベターと言えます。

あるいは、それも困難ならば昼食と晩食の一日2食を原則として、でも同じ比重にする、食事のタイミングをたとえば午前10時と午後10時というふうに等間隔に保つ……というのでも、今よりベターならばそのほうが良い、というふうにも考えられます。

もちろん、最善なのはどちらかと考えれば別ですが……その「最善」の理想形が現実に無理だから糖尿病予備軍がこれほど増えているわけです。

逆のことを言うと、仮にですが、今の食生活のままで、それにプラスして朝食を追加する……のは本末転倒。

あるいは、朝にほとんど時間的余裕が無いのに短時間で朝食をかっこんで出勤……ではより血糖値を上げるだけ。

という可能性も考えられます。

個人的な体感ですが、ふだんは朝食を抜いているのにたまに朝食を食べたりすると、なぜかその後余計に食欲が出てきて、昼や夜に「今日はいっか」などと言ってたらふく食べまくってしまった……という経験がけっこう何度も記憶にあります。

どうしてそうなるのかよく分かりませんが、結局は、一日の生活習慣を全体的に理想に近付けることのほうが本来決定的に重要なことであって、朝食を取るという習慣は、そのための一つ有効な方法であり得るというような位置付けになっているように思えます。

もちろん、逆に「朝食を抜いたほうが健康に良い」という説に関しても、私個人の体感はどうあれ確証を持って正しいというまでの根拠を私は持ち合わせていません。

ですから、もともと朝食をしっかり摂る習慣がある人や、それが可能な環境にある人の場合、それをあえて変更するべきかどうかは微妙です。

いずれにしろ、食事について重要なポイントは、食事の時間と量を意識的に一定に保つことであると私は思っています。

もし朝食がそれに貢献する環境にあるなら摂ればよいし、そうでないなら常識にとらわれて無理に朝食べなくてもいい……と私は結論します。

ライフスタイルのペースメーキングの意味での、朝食の重要性

ところで、もう一つ別の面で、たとえば自分の精神的な支えだったり、あるいは良好な家族関係の構築とかお子さんの教育上の指針として……こういった観点で、朝食の時間というものが一役買っているという場合があるのは否定できません。

毎日の朝食を家族でいっしょに食べる……テレビCMなどでもよく「理想の家庭の風景」として描かれますが、このような習慣は単に栄養がどう、食事の体への影響がどうという以外にも重要な面を含んでいます。

そもそも人は単なる物理、化学的な反応だけでは語れない存在です。また、ある意味では家庭環境や人間関係といったものが人間の健康とか、寿命とかに一定の影響を与えている可能性があるのも想像に難くないでしょう。

ただ、朝の家族とのコミュニケーションの手段も、別に「朝食」に限る必要はないとも言えます。

たとえば、朝食の有無は別として、朝、起きたらまず家族と顔を合わせ、声を掛け合う時間が日常習慣的に存在すること……これ自体が人の健康にとって有効だと思います。

帰宅時間がバラバラで、晩飯を家族そろって食べる機会がない……というならある程度無理してでも一緒に朝食を囲む時間を作る意味はあるかもしれません。

それも含めて、現代人の家庭生活のスタイルは多様化しており、なにも典型的な家庭環境だけが良いものであるというわけではありません。少なくとも自分に合った形での、自分なりの生活スタイルのあり方を意識的に問うことは必要ではないでしょうか?

ただ単に

「朝食をとるか、朝食を抜くか」

という点だけを過剰に意識することで他の視点を失ってしまうのではなく、現実によりベターな習慣を目指していく気持ちのほうが重要です。