【メタアナリシス】は健康情報に関する私たちの混乱を制御できるか

【世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事】

という本がとても売れているそうです。

ちょうどテレビでやっていたので見たのですが、ちょうど自分の問題意識に通じるところがあって、面白かったです。

そこで言われていたことの大まかなポイントを挙げると、

1 世の中にある健康情報は、エビデンスのレベルに差がある

まず、世の中にはすでにたくさんの(もはや多すぎて手が付けられないくらいの)健康食品とか、サプリメントとか、あるいは、食品の中のどんな成分が何に効き目があるとか……そういう情報が氾濫しています。

しかも、中には互いに矛盾するような情報や、真っ向から反論が出されているような例も珍しくないので、なんだか、知れば知るほど分からなくなるというか……何を信じたらいいのか迷ってしまう状況にあります。

で、そんな中、この本の著者である津川先生によりますと、そもそもこの手の情報の根拠、つまり

「エビデンス」

にも、様々なレベルがあると。

最も弱いエビデンスは、個人の意見とか体験談です。

次が、単独の研究レポートです。よくあるのが

「特定の食品を食べ続けている人たちは、〇〇を発症する率が平均より何%低い」

という感じのもの。よく聞きますよね?

しかし、私のイメージですが、そのような結果を出そうと思うなら、この食品はこういう効能がある……というデータが出るように実験を行う、なんてこともまあ難しくはないでしょう。

今や、企業などが主導する形でこのような情報が氾濫している感もあります。むしろ、このような一見確かなエビデンスを保証しているような情報……これが一番、私たちを混乱させる原因になっているんじゃないかとさえ感じるのです。

そこで、それよりレベルの高いエビデンスの取り方、それは「ランダム化比較試験(RCT:Randomized Controlled Trial)」というもので、これは、上のような

「恣意的な結果」

を極力避けるように実験を行うということです。

まず、被験者自体を選り好みせず、ランダムに抽出すること。

また、臨床実験を実施する側が、比較しようとする項目について、今どちらの被験者を扱っているかも分からない状態でデータを取ること。

……こういった工夫によって、あらかじめ期待される効果が表れるようにとか、そういうバイアスを取り除いた状態で、特定の項目についての客観的なデータを取ることを意図した方法です。

この方法は医療や治験などでも利用されており、比較的信頼できるような気がしますが、でも、しばしば同じ内容の比較試験なのに有意な差が出たと思ったら、別の研究グループが差は出なかったと発表したり……という場合もけっこうあります。

さて、とにかくこのように、世の中にある健康情報の「確実性」のレベルは、低い方から順に

① 意見や体験談
② 単独の観察研究
③ ランダム化比較試験

なのですが、でも、津川先生曰く、それらよりさらに高いレベルでエビデンスを与えるのが、

④ メタアナリシス

なのだそうです。

メタアナリシスという分析手法は、すでに数多提出されている研究や実験、統計などのデータを集めて俯瞰することで、その確実性を「メタ的に」処理して妥当性を判断するという手法です。

2 「本当に体に良い食品」だと確実に言えるのは、5つだけ

もちろん「現在のところ」という意味なのでしょうが、メタアナリシスによって津川先生が

「これは確実に本当に体に良いと言える食品」

と太鼓判を押せるのは、現在

① 野菜と果実
② ナッツ類
③ 茶色い炭水化物
④ オリーブオイル
⑤ 魚

だけだそうです。

私はそれを聞いてて思ったんですけど、じゃあこれ以外にいろいろ言われている健康に良い食品って何だったの?

「牛乳は?」「納豆は?」「海苔や昆布は?」「キノコ類は?」

これから、もっとたくさんの研究データが蓄積されて、メタアナリシスによって解析されていくにつれて、もっと多くの食品が、健康に良いってことが証明されていくのかもしれません。

とは言え、逆に言うと、メタアナリシスによって確実性が保証されていないからと言って、他の食品が健康に悪い、あるいは健康にとって何の関係性もない……ということが証明されたことにもならないんですよね?

だから、結局今までの私たちの理解のしかたも変えなければならないと思うんです。

今、この5つの食品こそ、確実に体に良い……って言われたからって、今度はそればっかり意識して極端に偏った食生活になったら本末転倒なのです。

むしろ、メタアナリシスの本来のというか、そもそもの意義は、必ずしも高いエビデンスが存在しない情報に、あまりにも振り回され過ぎる私たちのあり方に対する「警鐘」だということではないでしょうか?

関連記事:私たちは日々もたらされる健康情報とどう向き合えばよいのか?

3 重要なのは「成分」ではなくて、食品そのもの

もうひとつ、番組の中で津川先生が仰っていたことで印象的だったのは、私たちはよく特定の成分、たとえばポリフェノールとかDHAとかアスタキサンチンとか……その成分について説明されると非常に納得できるような「気持ち」になるのですが、そういう考え方自体が

「もう古い」

とのことです。

体に良い食品、たとえば「魚」と言ったら、魚全般が良いということが確実に言えるのであって、じゃあどの魚が一番良いとか、または、魚に含まれる何という成分がどういう効果があるとか……そういうふうに考えてしまうその発想がすでに違うのだそうです。

「魚」なら魚を、毎日継続的に一定量(1日60gとのことです)食べる習慣があることそのものが健康に良いのだと。それが確実に言えることなのだと。

……って考えると、特定の成分だけを抽出した人工的な食品やサプリメントに頼り過ぎることなども再考の余地がありそうですよね。

とにかく、あまり細かい「健康情報」に振り回されて右往左往していること自体が一番無意味。

たくさんの健康情報を自分なりに「最適化する」ための基準を探さなければならないと考えていたところなので、メタアナリシスという分析手法があるということを知って、とても興味深く、感じるところがありました。