牡蠣はなぜノロウィルスを持っているのか?

牡蠣のシーズンになるとワクワクしますが、一方でいつも

「ノロウイルス」

という言葉が頭をよぎります。

スーパーなどでは牡蠣は「加熱用」「生食用」と表示が区別されていますが、結局は生食用だから絶対大丈夫という完全な保証はないと言われています。

一般的には、生食用の牡蠣も加熱用の牡蠣もほぼ同じ状態で生育されます。

天然のものでも同じことですが、生食用のものはウィルスが繁殖していないと思われる水質の良い場所までいったん移動して、そこで体内に蓄積されたノロウィルスなどが排出されるのを待つそうです。

もちろん、産地やメーカーによって実際の処理が異なります。個体検品を行っている場合もありますが、その場合でも通常はランダムなサンプリングであって1個1個すべての牡蠣を検査しているわけではありません(そういう業者がないとは言えませんが)。

つまり究極的には生ガキは

「当たるも八卦、当たらぬも八卦……」

という部分があるということになります。

ノロウィルスの問題が大きく取り上げられて以降、飲食店やホテル、給食センターなどで調理に従事する方などは、牡蠣を一切食べないようにと指導されることもあると聞きます。牡蠣好きの人にとっては、仕事とはいえちょっとかわいそうな気もしますね。

しかし、業務でノロウィルスによる食中毒など発生したしまえば大問題ですからね……悩ましいですね。

ノロウィルスにあたると、24時間~数日の潜伏期間を経て、急激な嘔吐や激しい下痢を伴う腹痛に見舞われます。高熱が出る場合もあります。

健康な成人の場合3~4日で回復し、死に至ることは稀ですが、お子さんや高齢者の方、あるいはもともと抵抗力が弱っているときに感染すると危険な場合もあります。また、嘔吐時にのどが詰まったり誤飲性肺炎に至って死亡する場合もあります。

牡蠣のノロウィルスはどこから来るのか

それにしても、牡蠣はどうしてノロウィルスを持っているのでしょうか?

牡蠣は水中に生息するプランクトンを餌にするために、大量の海水を体内に取り込んでは排出し続けることで、そこに含まれるプランクトンを吸収します。

一方、ノロウィルスは人などから排出された後水中を浮遊して海にも流れていきます。牡蠣は河口付近で生育することが多いので汚水に接触する機会も比較的多いのです。つまり牡蠣はそれと知らずにノロウィルスを含む海水を大量に体内に取り込み続けるうちに、ウィルスを蓄積してしまうのです。

巻貝は海水を取り込むのではなく階層を直接食べるのでノロウィルスを体内に蓄積するようなことはありません。牡蠣以外でノロウィルスを警戒する必要があるのは主にアサリ、シジミ、ハマグリなどの二枚貝です。

ただ、ノロウィルスは過熱に弱く、85℃以上で90秒以上の加熱調理をすれば感染力を失います。ですから、たとえばシジミを味噌汁に入れたり、アサリやハマグリの煮物を作ったりする際には感染する確率が低いわけです。

この点で、牡蠣は生食に供する場合もありますし、鍋物に使う場合でも中まで十分に火が通らないうちに食べる可能性があります。それもあって、ノロウィルス=牡蠣というイメージが定着しているのでしょう。

手や食器、調理器具も感染経路になる

ノロウィルスは煮物や焼き物といった加熱調理の場合にはあまり心配いらないわけですが、とは言っても、その調理の過程ですでに調理器具や食器、あるいは調理する人の手などに移っている可能性はあります。

ですから、たとえば二枚貝を調理する場合には他の食材の仕込みが終わった後、最後に行うとか、使った包丁やまな板はすぐに洗浄し、熱湯消毒するといった配慮が必要になります。アサリやシジミは調理の前に「砂抜き」を必要としますが、この時に貝が飛ばした水が付近の器具や、置きっぱなしの他の食材などにかかってしまう可能性もあります。

基本的に、調理中は感染の可能性がある食材は「他のものと隔離する」ことを徹底することが大事です。