どの油が体に良い、体に悪いという話

野菜をたくさん食べなければと思い始めて、ふと気になったのが「油」です。
野菜と言っても、私としてはサラダもそこそこなら良いのですが、たくさん食べるとなると炒め物がいいなあと……。

健康に良い食用油ってCMでいつも見ますけど、今までは気にしたこともなく、スーパーで売っている一番お徳用の油で済ましていました。
健康を考えるなら、やっぱりこういう油?
よく知らないけど、とりあえずちょっと高いんですよね、値段が……。
妻に相談してみよう……。

ただし、昨今ではむしろサラダ油やマーガリンといったものに含まれる脂肪分は植物性であるはずなのにむしろ体に悪いという噂も聞きます。
いったい何が正しいんだろう……?
油というか、脂肪について言えばですね、今までは、ざっくりと
肉の脂肪は体に悪い
魚と植物性の油は体に良い
でも、どちらにしても量は抑えたほうがいい
……というふうに私はごく単純に理解していました。

しかし、今では研究も進んで、一口に油、脂肪と言ってもさまざまな種類と、それぞれの成分の有効性や、体への影響といったものが情報として表されています。

今の時点ではっきり言えること

ですが、実際のところ、どの油がどんな働きがあって、体にどんな影響を及ぼしうるのかということが今の時点で完全に解明されているわけではありません。
むしろ、さまざまな研究が行われて、それぞれに主張されている状況に見えます。場合によっては真っ向から矛盾する見解が出ていることも珍しくはありません。

ただ、今の時点ではっきり言えることは、まず、脂質そのものはエネルギー源となり体脂肪脂となるだけでなく、細胞膜を形成したり、保護したりする役目を負っているものですから、そもそもは絶対に必要な栄養素であって、完全にゼロにするというような考えは間違いだということです。
しかし、過剰に摂取した場合には肥満や動脈硬化など明らかな悪影響があることも事実です。
ですから、単純に脂肪は避けたほうが良い、脂っこいものはなるべく食べないほうがいい……というだけの認識では有効とは言えなくて……問題はどの油を使うのが最も適切か、という話になります。

そして、現在のところ主に注目されているのは、さまざまな食品に含まれる脂質の成分としての
「脂肪酸」
の種類です。これにいろいろな構造のものがあって、それぞれに体の中での働きが変わってくるからです。

おそらく、確定的な結論は出ていない

具体的にどの脂肪酸が体にどんな影響を与えているかという話になると、これは現在でも諸説あって異なる見解が出されている場合もあり、全体としてまだまだ研究途上にあるという印象です。
もちろん、各研究者、あるいは実際にその商品を販売している会社さんなどのサイトにはそれぞれの立場からの見解が載っており、けっこう断定的に書かれている場合も多いです。
しかし、ひとつの意見を全面的に確定したものと信じ込むのは早計かもしれません。

私もそうですが、たとえば血圧が高いから何とかしなければ……と悩んでいる人は、
「この脂が血圧に良い」
と一言書いてあるだけで、まるで藁にもすがるような気持でそれは絶対に良いはずだと信じたい気持ちになることでしょう。
しかし、それは必ずしも確定した結論ではないかもしれません。また、良いと言われているからといって、他の者をすべて排除してそればかりをむやみに多量に摂取すればいいというものでもありません。
ある意味、いったん少し冷静になって、バランス感覚というかリスク分散も配慮しつつ、適度に自分の食生活に取り入れてみる、という基本的態度が重要と考えられます。

体に良いとされる油について

先に挙げた、日清オイリオのヘルシーリセッタのサイトを見ると、
「この油は、中鎖脂肪酸を含み、体に脂肪がつきにくいのが特徴です。体脂肪が気になる方や、肥満気味の方は、通常の油に替えて、この油をお使いいただくことをおすすめします」
とあります。基本的には菜種油がベースとなっていますが少なくとも体脂肪に関しては特定保健用食品として認められた、いわばお墨付きのある油です。
中鎖脂肪酸というのは、ふつうの油(長鎖脂肪酸)と比較すると消化→吸収→消費の流れが速いという特徴があり、その過程で体脂肪の消費も促進される効果があります。

【キャノーラ油】
日本ではそもそもナタネアブラが江戸時代から伝統的に使用されています。キャノーラ油も菜種油の一種なのですが、品種改良された特定の品種の菜種から採ったものを指します。
イメージとして、脂っこさが少ない、揚げ物をしたときにサクッと軽く揚がると言われていますが、栄養面で言えばキャノーラ油に使用される菜種はかつて健康に良くないとされていた「エルカ酸」「グルコシノレート」の含有量が少なくなるように品種改良されたものです。
ちなみに、エルカ酸というのは伝統的な菜種油に多く含まれていた成分で、心臓への悪影響が懸念されるという研究報告があったため、避けられていました。しかし、近年の研究ではこの説自体は否定されています。
また、グルコシノレートはそもそも水溶性なので食用油として抽出する際には含まれないのですが、家畜の甲状腺腫を誘発する物質として忌避されていました。
このような経緯から、主にカナダでこれらの物質を含まない新たな菜種の品種の開発が進み、この改良された菜種から出来る油を「キャノーラ油」と呼ぶようになったわけです。

【オリーブオイル】
また、今よく聞く健康に良い油と言って代表的なのがオリーブ・オイルでしょうね。
オリーブの果実から作られ、オレイン酸が多く含まれるため酸化されにくい特徴があります。オレイン酸は悪玉コレステロールだけを減らす働きがあるとされています。
また、脂肪酸の多くは熱に弱いのですが、オリーブオイルに含まれるオレイン酸は加熱しても失われにくいので揚げ物や炒め物に使っても効果が残るため重宝です。
中でも、いわゆる「エキストラバージン・オリーブオイル」と呼ばれているものは純粋にオリーブのみを搾って作られたものでそれ以上の加工や混合がなく、酸度がきわめて少ないものだけを指します。
エキストラバージン・オリーブオイルには、抗酸化作用があるとされるオレオカンタールという他の油に含まれない特殊な成分があることも注目に値します。
またOPAという特殊な成分が含まれており、これは皮膚再生を助ける機能があるとされていることから、美容効果やアトピー性皮膚炎などの改善が期待されるので女性にも人気です。

【ココナッツオイル】
ココナッツオイルも最近話題になりましたが、ココナッツオイルの成分は中鎖脂肪酸および短鎖脂肪酸が7割くらいなので代謝が早く体脂肪が付きにくいのが特徴です。
ココナッツオイルに含まれる中鎖脂肪酸は体内に取り込まれるとケトン体という物質を作ります。血中にケトン体が増えると通常主なエネルギー源であるブドウ糖だけではなく、体内の脂肪が優先的にエネルギーとして消費されるように切り替わるのです。
また、ココナッツオイルの中鎖脂肪酸にはインスリン抵抗性を改善する効果があると言われています。
ただし、精製済のココナッツオイルは独特の香りが少なく料理全般に使いやすいですが、加熱、漂白によって一部の成分があらかじめ除去されています。
未精製のエクストラヴァージンココナッツオイルなら加熱も添加も一切なく抽出されるため、さらにラウリン酸やビタミンEが豊富です。

実用的な面で、ココナッツオイルは開封しても2年程度は酸化しませんし、200℃未満の加熱調理に用いてもトランス脂肪酸が発生しないので強火でなければ炒め物にも使えるというメリットがあります。
炒め物や揚げ物の場合、その油がどれくらいの加熱まで耐えられるかはけっこう重要なポイントとなります。
有害と言われる物質が発生しない臨界温度はどんな脂肪酸が含まれているかによって決まります。たとえば一般的なコーン油の臨界温度は140℃とかなり低めです。
ココナッツオイルの臨界温度は200℃、ちなみにオリーブオイルは210℃です。

【あまに油】
亜麻の種子をつぶして抽出したものを亜麻仁油(あまに油)と言います。α-リノレン酸をはじめとする不飽和脂肪酸の含有量が多く、高コレステロール血症への有効性がある他、α-リノレン酸には血管を拡張させ血圧を下げる作用があるとも考えられています。
と言っても、α-リノレン酸はあまに油に特有の成分というわけではなく、菜種油や大豆油も、亜麻仁油と比べると少ないですが含まれています。

体に悪いとされる脂肪について

さて、いろいろな油の良い面を挙げてきましたが、初めにお伝えしたように、逆に良くないと言われる面も同時にあります。
昨今大きく取り上げられている問題は、食用油の製造過程で作られる
「トランス脂肪酸」
が、多くの生活習慣病を助長する原因になっていると考えられることです。
悪玉コレステロールの増加
糖尿病リスクの上昇
心臓疾患リスクの上昇
などが疑われています。

【キャノーラ油】
トランス脂肪酸はごく一般的な食用油にも含まれていますが、キャノーラ油にもそれと同程度の量が含まれているため、もちろんすぐにはっきり影響が現れるわけではありませんが、習慣的に多く摂取していると分解し切れなかったトランス脂肪酸が体内に蓄積されていき、生活習慣病を助長すると考えられます。
また、キャノーラ油にはリノール酸も含まれています。
リノール酸とは基本的には人間にとって必要不可欠なものですが、体内で合成して作ることができないため、どうしても食物から摂取しなければならない「必須脂肪酸」のひとつです。
ですから、少量は良いのです。それに、リノール酸にコレステロールを低下させる効果や、血栓ができるのを防いだり、不整脈の発生を防止したりする効果が報告されており
「健康に良い油」
と見ることもできます。
しかし、現在ではむしろ、それらの脂肪酸が不足することよりも過剰摂取した場合の悪影響のほうが心配されるようになっており、たとえば毎日毎日キャノーラ油を用いた料理ばかり食べていた場合には過剰摂取となり、糖尿病やがん、あるいはアトピー性皮膚炎の発症リスクが高まると考えられています。
また、リノール酸は酸化しやすく、酸化すると身体に有害な過酸化脂質となって逆効果になります。また、キャノーラ油に熱を加えることによって発生するヒドロキシノネナールという成分は認知症やアルツハイマーなどを引き起こす毒性があると言われます。
よって、なるべく短期で使い切るとか、揚げ油として何度も使い回すのは避けるといった注意が必要になります。

【オリーブオイル】
オリーブオイルについて一番の注意点は、偽物や粗悪品が航行しているという事実です。
そもそも、オリーブオイルは品質のグレードがかなり細かく分かれていますが、一般にいろいろな効果が高いと言われているのは最上位のエクストラ・ヴァージン・オイルだけだと考えたほうがよいです。

エクストラ・ヴァージン・オイル
ファイン・ヴァージン・オイル
オーディナリー・ヴァージン・オイル
ランパンテ・ヴァージン・オイル
精製オリーブオイル
ピュア・オリーブオイル
精製オリーブ・ポーマス・オイル
オリーブ・ポーマス・オイル

→成形テキスト:Wikipediaより引用

しかも、その人気の高さからエクストラ・ヴァージン・オイルと表示があっても本当かどうかがけっこう疑わしい製品もあります。
ですから、信頼のおけるブランドの、相応の値段のものを選ぶ必要があります。

【ココナッツオイル】
ココナッツオイルを水素化したいわゆる「ヤシ硬化油」が肝臓疾患のリスクを高めるという研究があります。
しかし、水素化されたココナッツオイルは基本的に工業用で、不飽和脂肪酸を飽和脂肪酸に変えるために水素が使われます。アイスクリームなどの原材料にはふつうに使われており、その場合でも表示はふつう「植物性油脂」としか書いてありませんので、その意味では注意が必要です。

しかし、ココナッツオイルとして市販されているもので水素化処理がされているものは基本的にありませんので、その心配はいりません。

ただ、精製済みのものは栄養価が低下した乾燥ココナッツから作られる場合が多く、生成過程でトランス脂肪酸が発生したり、あえて加えられている場合もあります。また、多くはラウリン酸が除去されています。そのため、期待するような効果が実質的にはまったくない、というものもあります。
特に、エキストラバージンココナッツオイルの人気が高いのですが、国産の場合表示の規制がないため、保存料や添加物が使われていたり、加熱処理されているにもかかわらず「エキストラバージン」と書いてある場合もあり得ます。海外のものでも、偽造や偽表示が横行していたこともあります。
よって、どのブランドのどの製品を選ぶか慎重に調べたほうがいいでしょう。

【あまに油】
あまに油に多く含まれるα-リノレン酸は、がん細胞の増殖を抑える、血圧を下げる、アトピーの症状を緩和するなど多くの有効性が報告されていますが、逆に摂り過ぎた場合には
前立腺がんのリスクが上昇
胃腸障害、軟便や下痢、腹痛
アレルギー反応
が見られる場合もあるようです。
また、服用薬の吸収を阻害する場合があります。

よって、使用はごく少量を時々というくらいが妥当と考えられます。たとえば毎日の調理にいつもアマニ油だけを使うというような使い方は避けるべきでしょう。
また、亜麻仁油は体質や摂取量によりますが、さまざまな「アナフィラキシー反応」が報告されています。
アナフィラキシー反応とは、単発で急性のアレルギー反応のことで、典型的なものは蜂に刺されたときのように毒物が体内に侵入することによってごく短時間の内に強い症状が出ることを言います。
また、妊婦さんや授乳期のお母さんは避けたほうが良いと言われています。