牡蠣にあたる原因と、それでも食べるなら

牡蠣が好きな人は多いと思います。しかし、昨今は牡蠣は「あたる」という疑念が付きまといます。イメージが先行して不安を持ちながら食べるのでは美味しさも半減ですよね?

少なくとも、牡蠣にあたる原因を整理しておき、できるだけ安心して思いっ切り楽しく食べたいものです。

そこで考えてみると、一口に牡蠣にあたる原因と言っても、その原因自体が複数あることに気が付きます。

まず、すぐに思い付くのは最近特に話題にもなり、警戒が強くなっている「ノロウィルス」ですよね?

しかし、ノロウィルスが問題になる前から牡蠣はしばしばあたるものという認識はあったはずです。

それとは別に牡蠣アレルギーもあります。アレルギーと食中毒はぜんぜん別のものですよね?

このような情報が混乱していると必要以上に不安ばかりが募ったり、逆に適切な対策が取れなくなったりする心配があります。

牡蠣にあたる原因(1)ノロウィルス

牡蠣であたる原因として最も多いのがノロウィルスと言われています。仮に感染しても必ず症状が出るとは限りません。潜伏期間が24時間以上ですので、牡蠣を食べた翌日に急に腹痛や下痢、嘔吐があった場合にはノロウィルス感染の可能性が高いです。

ノロウィルス感染の場合の注意点は、嘔吐や下痢に対応するために水分を多めに取りつつ、体力を温存することです。これらの症状はノロウィルスを一刻も早く体外に排出しようとするためなので、症状を和らげるために下痢止めなどの薬を飲むのは逆効果とされています。

通常なら数日我慢すれば症状は治まり、回復します。

ただし体調不良の場合や小さなお子さんの場合にはウイルスに対抗する力が弱く、症状が重篤になったり最悪は死亡事故も起こり得るので、医師に処置を頼むほうがよいでしょう。というか、小さなお子さんにはそもそも勧めないほうがよいでしょう。また大人の方でも体調の悪い時には生ガキなどは手を出さないほうが無難です。

ノロウィルスは人の皮膚や、感染者の嘔吐物や排泄物からも容易に感染します。よって、家族などがこのような症状を起こした際には、周囲の人もそれらに触れないように細心の注意が必要です。

牡蠣にあたる原因(2)腸炎ビブリオ食中毒

「腸炎ビブリオ」という細菌は海水中に生息していて、それを取り込んだ魚介類を食べると感染することがあります。日本で発生する食中毒の原因で最も多いのがサルモネラ菌と腸炎ビブリオ菌の2つです。

牡蠣に限ったことではありませんが、腸炎ビブリオは魚介類を生食することで感染しやすいため、日本以外の国ではそれほど多く発生しません。

また、ノロウィルスと違って、腸炎ビブリオ菌はかなり大量に摂取しない限り発症しない菌(ノロウィルスは数百個程度でも発症するのに対し、腸炎ビブリオは100万個以上必要)なので、人から人への感染の機会はほとんどありません。

感染した場合の症状はノロウィルスと似ています。激しい腹痛や下痢、嘔吐、発熱などです。しかし、腸炎ビブリオは非常に繁殖力の強い菌なので潜伏時間がノロウィルスより圧倒的に早く、感染後6~12時間以内に症状が出ます。

症状が出た場合の対応は、やはり下痢や嘔吐に応じた水分の補給。また腸炎ビブリオ菌は細胞膜を破壊する毒性を持つので、重篤な場合には心臓など循環器系の細胞にまで毒が達し、命の危険が伴う場合もあるので早急な対応が必要です。

牡蠣にあたる原因(3)貝毒

上記の菌以外にも、牡蠣などが食べるプランクトンの中にはそもそも毒性を持つ種類のものが含まれています。これらを

「貝毒」

と呼びます。貝毒を蓄積するのも牡蠣の他アサリ、シジミ、ホタテ、ハマグリなどの二枚貝です。

毒性を持つプランクトンには「麻痺性」のものと「下痢性」のものがあります(他に「記憶喪失性貝毒」といった種類のものもありますが日本では症例がありません)。

麻痺性貝毒にあたった場合、食べた直後からすぐに異常を感じます。これは同じ麻痺性の毒であるフグのテトロドトキシンにあたった場合と同じで、しびれを感じたり、感覚が麻痺したりしているうちに最悪の場合2時間程度の内に頭痛、めまい、嘔吐感、呼吸困難などの全身症状が現れ、最悪の場合生命を落とします。

麻痺性貝毒には特効薬のような解毒剤や抗生物質が存在しません

よって発症した場合にはできるだけ迅速に毒を吐けるだけ吐かせ、即刻医療機関へ行って人工呼吸などの延命処置を施しながら毒が排泄されるのを待つしかありません。

一方、下痢性の貝毒の場合には食後30分~数時間程度後に胃腸炎を起こして腹痛、嘔吐、下痢といった症状が現れます。こちらは通常数日間我慢すれば回復します。死亡した例はありません。

厄介なことに、貝毒は一般にどれも熱に強く、調理による加熱ではほとんど効果はありません。ですから、ある意味で「食べたら終わり」という感じです。

……と聞くと、何やら非常に怖いもののようにも感じます。

けれども、実際には現在は「貝毒」にあたったというニュースも噂もほとんど聞いたことがない人のほうが多いのではないでしょうか?

実際には、日本では昭和50年代頃に多くの食中毒の原因が貝毒であることが判明しました。それまでは分からなかったわけです。

それで、国による貝毒の規制値が設定され、現在ではこの基準にしたがって各自治体や漁業組合、企業などは規制値以下の貝類が出荷されるよう貝毒検査を行っているのです。

また貝毒の発生原因となるプランクトンの発生状況も各自治体などが監視しています。有毒プランクトンの異常発生等が発見された水域の情報は報道あるいは行政からの広報などで一般にも告知されます。

ですから、もちろん完全に防げるというものでもありませんが、現在では貝毒による事故はそれほど日常的なものではなく、過剰に恐れる必要はないものと言えます。

牡蠣にあたる原因(4)アレルギー、アナフィラキシーショック

厳密には感染による食中毒とは異なりますが、もともと持っているアレルギーによる症状も考えられます。

牡蠣アレルギーは「トロポミオシン」というタンパク質に対するアレルギーが発症することで起こります。上記の感染による中毒症状と同じように下痢、嘔吐などを伴う場合もありますが、アレルギーの場合には特有の蕁麻疹や特定の部位の発疹、また口元やのどの奥にかゆみを感じたりする症状が出る場合が多いです。

あるいは、咳が出る、くしゃみが止まらない、のどが鳴る、声がかれるというような症状が出る人もいます。

アレルギーは細菌やプランクトンによるものではなくて牡蠣そのものに含まれる成分に対する過剰な免疫反応が原因なので、生ガキだろうがカキフライだろうが、あるいは牡蠣の成分を使ったソースやサプリメントだろうが関係なく症状が出るはずです。

もともと牡蠣アレルギーを持っていることを自覚している人は別として、ある程度の年齢になって急に発症する人もいるので、疑わしい場合には一度検査を受けてみる必要があるかもしれません。

俗に、牡蠣は一度当たった人は再び当たりやすい……などという人もいますが、軽い食あたりかと思っていたらいつの間にかアレルギーだったということも考えられます。また、アレルギーでありながらその原因食品を摂取すると、より重篤な症状が一気に出て危険な状態になることもあります(アナフィラキシーショック)。

アナフィラキシーショックに至った場合には意識の昏睡や呼吸困難などを引き起こす可能性あり大変危険です。

それでも牡蠣は食べたい

このように、牡蠣にあたる原因には何種類かの違った原因が考えられます。そして、症状が似ていても潜伏時間や細かい対応のしかたが異なります。

これらを踏まえると、

「加熱してあるから大丈夫」

とも言えないし。

「軽い症状だから、しばらく様子を見てれば大丈夫だろう」

というような安易な判断も命取りになる危険性がないとは言えないですね。

つまり、現在のところ「完全な防止策」はなく、また「完全な治療法」もないのです。

もちろん確率としては低いのですが、でも程度の差こそあれ、実際に「牡蠣にあたる人」は毎年一定数発生しているわけで……まあ、でも私は食べますけどね(笑)

どうせなら、ある程度事前の知識を持ったうえで、リスクを承知で気合を入れて食べたほうが何となく「あたらない」ような気がする……のは私だけでしょうか?