長寿遺伝子「サーチュイン」とサートフード

サーチュイン(Sirtuin)遺伝子とは、寿命や老化の進行に関与する遺伝子と見られており、長寿遺伝子、長生き遺伝子などとテレビでも話題になったことがあります。

この遺伝子が活性化すると、個体の寿命が伸びるとともに、老化の進行が止まるか、もしかすると若返りにつながる可能性があるという説があります。

また、動脈硬化、アルツハイマー病、血糖値の上昇などを抑制する働きがあるという研究も発表されている他、細胞の寿命を決定づける「テロメア」がすり減るのを抑える働きがあることも示唆されています。

サーチュイン遺伝子は最初は1999年、アメリカで酵母菌を使った研究において発見されました。この遺伝子を取り除くと酵母が早く死滅し、これを増やすと延命することが発見されたのです。

その後、ショウジョウバエ、線虫について寿命が操作できることが確認され、現在ではラットやサルについての研究報告もあり、おそらく動物全般に当てはまるものと推定されます。

サーチュイン遺伝子はもちろん人間にも存在することが分かっています。人間(哺乳類)では現在Sirt1~Sirt7と名付けられた7種類のサーチュイン遺伝子が発見されています。

サーチュイン遺伝子は「活性化」しなければ効果はない

ただし、サーチュイン遺伝子はただ存在するだけでは機能しません。遺伝子内に存在するサーチュイン遺伝子は通常はいわばスイッチが切れた状態になっており、働かせるには「活性化」が必要です。そこでサーチュイン遺伝子を活性化させる「スイッチ」の役割をするものが何なのか……ということが重要なポイントとなります。

今現在もさまざまな研究が行われているわけですが、ここまで、サーチュイン遺伝子を活性化させる手段として有意と見られているのは、

① 摂取カロリーを抑えること(つまり個体を一定時間軽度の飢餓状態に置くこと)
② ポリフェノール一種「「レスベラトロール」の摂取(ただし大量に必要)

です。

サーチュイン遺伝子の活性化には「NAD+(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)」という因子が影響しているとみられます。NAD+は、個体の摂取カロリーが多い場合に減少し、少ないと増加する性質があるのです。

レスベラトロールの摂取については、通常に食品などから摂取する程度の少量ではまったく影響がありません。そのためレスベラトロールを高濃度に含有するサプリメントが販売されています。

サートフードとは?

これ以外にも、サーチュイン遺伝子の活性化を起こす可能性があると見られる食品が多くあります。これらの食品群は

「サートフード」

と呼ばれてブームになっています。研究者からは筋肉の発達、ダイエット効果、記憶力の向上、血糖値の抑制……など多くの効果についてデータが提出されているところです。

現在、サートフードとして挙げられている食品は、ケール、パセリ、玉ねぎなどの野菜類、オリーブ、いちご、りんごなどの果実の他、クルミ、ウコン、カカオ、大豆、また日本人には従来から馴染みの深い味噌、蕎麦、緑茶などもあります。

ただし、現在行われているサートフードの効果についての研究の多くは、あくまでこれらの食品を一定期間摂取した場合の経過を計測した結果を述べているにすぎず、たとえば特定の物質が直接的にサーチュイン遺伝子に変化を与える場面が観察されたとか、遺伝子レベルで明らかに関与していることが裏付けられるような実験が行われたというわけではないようです。

ですから、サートフードは一般的に見てももちろん「健康に良い」と推測されるような食品が並んでいるだけのようにも見えます。

サートフードを多く摂取することが直接的に

「人間の寿命を伸ばす」

ことに貢献するかどうかというのは、実はまだはっきり分かっていないのです。

サーチュイン遺伝子の問題に限らず、もちろん現段階では人間の寿命を伸ばす方法が確立したわけではありません。そもそも寿命を人工的に伸ばすような遺伝子操作が可能かどうかという問題自体、否定的な研究者もいます。

しかし、いずれにしろ未知の領域です。今後の研究の発展に大いに期待したいところですよね。