高血圧の改善、適度な運動って何のこと?

「適度な運動」

……この言葉はよく聞きますが、具体的には適度ってどの程度なんでしょうか?

想像ですが、運動って言っても、やり過ぎたら逆に血圧が上がってしまうような気もするんですが。

また、いつ、どんなタイミングで運動すれば血圧のため最も効果的なんでしょうか?

……実際に考え始めるとけっこう難しくなってしまいます。

高血圧の人にとって、適度な運動って何?

適度な運動は、確かに血圧を下げる効果があります。

しかし、血圧を気にしている人が生活に取り入れるべき適度な運動というのは、いったい何を指しているのですか?

血圧を意識した場合、適度な運動というのは主に

心臓や肺の機能を維持、強化する

血液の循環を良くする

という効果を狙って行うものです。

ただし、心臓や肺を強くするという意味は、激しい運動に耐えられるように鍛える、ということではありません。

そうではなくて、心臓や肺が酸素を取り入れる能力を高めるということ、言い換えれば、よりスムーズに体が十分な酸素を摂取できるような心肺機能を作るという意味です。

そして、上の狙いを実現するためには

「有酸素運動」

ということになります。

有酸素運動というのは、単純に言えば酸素を取り入れながらする運動という意味です。典型例は、水泳、ジョギング、エアロビクス……などが思い浮かぶでしょう。

ちなみに、この反対は

「無酸素運動」

で、典型的なのはバーベル上げやダッシュといったものです。

と言っても、無酸素運動だからずっと息を止めてやるのか?

……というともちろんそんなことはありません。

実は、有酸素運動であるか、無酸素運動であるかは運動や競技の種目によって分類されるわけではなくて、運動の強度、つまり激しさによります。

有酸素運動と違って、無酸素運動の目的は主に

筋肉などの疲労に耐える

運動によって発生する乳酸に対する抵抗力をつける

瞬間最大酸素摂取量を上げる

瞬発力を付ける

……といった点にあります。

そして、無酸素運動を行っている間は当然ですが逆に血圧は上がります。

それこそ、適度な運動でないと血圧にとってはまったく逆効果となってしまう危険性があるわけです。

適度な運動の具体的な目安

上記のように、実は有酸素運動と無酸素運動とは実際には連動しており、切り離せないのです。

ただ、無酸素運動というのは瞬発的に強力なエネルギーを出せますが長続きしません。それは、その運動中に取り入れた酸素をすぐにエネルギーに変えて使えないからです。

要するに、無酸素運動というのは、その間酸素が吸えないっていうことではなくて、その瞬間に摂取した酸素を運動のエネルギー源として利用できないタイプの運動、という意味なのですね。そして、それはその運動の強度が一定以上に高くなると起こるわけです。

これに対して、有酸素運動というのは取り入れた酸素と体内の糖質や脂肪が結び付いてエネルギーを発生させるため、比較的緩やかで、長い時間続けることが可能な運動になります。

ですから、たとえばジョギングというのは無理さえしなければ長い時間、たとえば1時間とか続けることが可能なのです。

運動の適度な強さは個人差がある

と言っても、たとえば私のように……。

ふだん完全に運動不足の人にとっては、軽いジョギング程度でもおそらく5分も持たずに鼓動は激しくなり、息は切れ、汗が噴き出すことでしょう。

「はあ、もうダメ~」

ってなるはずです。

これは、本人にとっては、その強度の運動を継続するためには「有酸素」では追い付かなくなって、体が勝手に無酸素運動に切り替えているということなのです。

血圧を下げたいと思って一生けんめい運動しているのに、これでは逆効果になりかねません。

ですから、運動の強度という意味ではだれにでも当てはまる基準はないのです。

同時に、高血圧と言ってもその進行度合いや合併症のリスクの高さなども個人差があります。重度の高血圧となるともはや運動療法による改善は難しく、かえって危険な場合もあり得ます。

ですから、実際に行うときにはドクターやトレーナーといった専門家の指導のもとで行うほうが望ましいです。

適度な運動の強さはカロリー消費量や心拍数などによって知ることもできますが、ごく体感的な目安という意味で言えば、それは端的に言って

「疲れない程度」

ということになります。

繰り返しますが、別に運動の種類はあまり関係ありません。

一般にはウォーキング、ジョギング・水泳・サイクリングなどは気軽でやりやすいです。

あるいはヨガとか太極拳なんてのも、興味があれば面白いかもしれません。どうせなら気分転換になるものが良いかもしれません。ストレス発散も血圧には有効ですから。

ただし、相手と競うようなものや、得点を争うような競技は避けたほうが良いかもしれません。それが目的化すると、つい無理をして頑張ってしまうからです。

いずれにしろ、基本的には種目は好きなものをやればいいのですが、単純に言うと、やっている最中、あるいはやり終わった直後に心地良さよりも疲労のほうが意識されるということにれば、強度を下げる必要があります。

具体的には、運動中に

強い息切れを感じる

動悸が強い

汗がだらだら出る(少しは良い)

話しかけられても苦しくて答えられない

運動後にめまいや立ち眩みがある

運動後に疲れてしまい、その後の家事や生活動作が億劫になる

……というような場合には、無理をする必要はぜんぜんないので負担を減らすようにメニューやスピード、負荷を落としてください。

たぶん、私などの場合、おそらく傍から見たら

「そんなの運動って言わないでしょ?」

というくらいの軽い運動でもけっこうな負担になるはずです。

でも、それでいいわけです。

慣れてきて、物足りなくなったら少しずつ目標を上げていっても良いです。

ただし、持続時間と頻度にはこだわる

有酸素運動で、

酸素の摂取をよりスムーズにする

血行を良くする

……といった効果を期待しているわけですが、その場合、強度はむしろ過剰にならないように注意したほうが良いのですが、

「持続時間」

「頻度」

は一定以上でないとあまり意味がないです。

一般的には、頻度は

最低でも2日に1回。可能なら1日2回

が有効となります。

たとえば、休日だけまとめて運動してもほとんど効果はないです。

また、有酸素運動が心肺機能や血流に対して有意な影響を及ぼすのは、

「最低でも30分程度」

続けて行った場合です。

ですから、たとえば10分くらいでもう疲れてできない、というような状態ならば、それを頑張って続けようとすることは意味がありません。

そうではなく、強度をもっと落として、ふつうに30分くらい続けられるものに変えたほうが有効です。

ベタなほうが取り組みやすい

今まで私と同じように運動不足だとか不摂生な習慣を続けていた人の場合、もしそれを解消しようと思い立って運動療法を始めるのなら、

「今までより少し、体を動かすようにしようかな」

とか、

「今度からエレベーターじゃなくて階段を使おう」

といった、日常のちょっとした……という感じの運動の取り入れ方をしようとしても、おそらくほとんどの場合うまく行きません。

実感として。

その意味では、よくテレビなどでやっている

「隙間時間に気軽にできる健康体操」

みたいなものも、個人的にはおすすめしません。

なぜかというと、それはあまりに気軽過ぎるがゆえに、定期的に行おうとする意識が薄くなってしまうからです。

ですから、たとえば

「毎日、午前と午後30分ずつウォーキングをする」

というようにはっきりした具体的な形を作ったほうが取り組みやすいです。

もちろん、もう少しハードルを下げるのは構いませんが、長く続けるという観点で言えば、どちらかと言えば、ある意味でベタなもののほうが実は続けやすいです。

習慣付けることができるかというと、必ずしもかんたんではないかもしれませんが、少なくともベタな取り組みのほうが

自分でも意識が続きやすい

仲間もできやすい

周囲で見ている家族などにも分かりやすい

よって、続ける環境が作りやすいからです。

最も重要なのは、やめないこと!!

しかし、すると今度はたいてい、人は自分に合った程度よりも強い運動をしようとしてしまいます。

いわば

「やってる感」

を出そうとしてしまうのですね。

意識としては、最初は意欲もあり、

「これくらいはしないと効かないだろう」

とイメージしてしまいやすいのですが、結果的にはきつくなってきます。

これでは長く続けることができません。

そうではなく、むしろ

「こんな程度で効果あるのかな?」

というくらいの軽い運動を、頻度と継続時間だけをきちんと守って行うことができれば理想形です。

最後に、頻度や持続時間は重要なのですが、それよりももっと重要なのは

「思い立ったらずっと続けること」

です。

長い目で見るとそれが最も効果的なのであり、そうでなければ細部にこだわってもほとんど無意味です。

自分なりの生活リズムを想定する

自律神経の自然なリズムを作るという観点で言えば、運動をする時間帯はできるだけ毎日同じ時間が理想です。

それは、血圧の上昇原因をなくすというという点だけで考えても有効ですし、結果的に快適な睡眠を誘発するという意味でも有効です。

細かく言えば、たとえば食前に運動するよりも食後3時間のほうが最も降圧効果が高いとか、より効果的なタイミングというのもあるかもしれません。

しかし、考え方としてはその瞬間の血圧を下げることより、長期的に良い影響を得ることを目指すほうがよほど重要でしょう。

その意味で考えれば、一日の中でどのタイミングが良いかということよりも、常に一定の時間帯に行うことを目指して、一日の中でのリズムやバランスを考慮したほうが長期的には効果が高そうです。

本当は、一日の中で仕事や運動など積極的な活動をする時間帯と、休息やリラックス、あるいはストレスの発散や解放に充てる時間帯がある程度のバランスで、一定の間隔で現れるような生活リズムが血圧の健全化にとっては最も効果的だと言えるでしょう。

もちろん、現実的には難しいかもしれません。

しかし、ひとつの基本形を一度意識して想定してみるだけでもかなり良い影響があります。

たとえば、休みの前日に徹夜してみたり、休日だけ昼過ぎまで寝ていたりするというのは、自律神経のリズムをあえて崩すようなものなので、血圧にとってはあまり良いこととは言えません。

ですから、生活習慣の「基本形」をきちんと意識しておくのです。

完璧主義はやめよう!!

あまり完璧主義のように神経質になるのも考えものです。

想定しておくことと、それを厳格に守ろうと考えることとは違います。

もちろん、突発的に仕事や所用でどうしても不規則になってしまう場合はあります。

どうしても参加したいイベントや、重要な行事のあります。血圧を気にするあまりそれらを思いとどまったりする必要は別にありません。

仕方のない事情や都合によって、たとえば1日や2日その基本形が崩れたからと言って、過剰に気にすることもありません。そんなことは、ふつうに生きていればだれにでも発生することです。

長い目で見れば、その1日や2日が、いきなりあなたの血圧に致命的なダメージを与えるなんて心配するのはナンセンスでしょう?

生活習慣とは、習慣であるところにこそ問題があります。

単発ならそれほど気にする必要はないです。

むしろ、そのように

「完璧であろう」

とする態度そのものが緊張を生むことになります。これでは自分で血圧をあげているようなものです。

それより注意するべきなのは、何かのきっかけでリズムが崩れたことで、そもそも生活リズムの基本形がどうであったかすら忘れてしまうくらいにバラバラになってしまうというような事態です。

これはむしろ完璧にしようと考え過ぎることによって起こります。

想定した基本形を忘れてしまったら、もちろん、それは血圧のコントロールにとって悪影響を与えます。そして、そうなれば結局は、定期的に運動することも、自律神経を良いリズムに保つことも、何もかもなし崩しに消えてしまうことになります。

……要するに、それは、もとの不摂生な生活習慣に逆戻りするというのと同じ意味ですよね?

それこそ最悪の結果と言えます。

本当に警戒しなければならないのは、あなたが当初考えた

「基本形」

が崩れること。

その基本形をうやむやにして、捨ててしまうこと

そして

もとの生活習慣に落ち着いてしまうこと

です。

それが、あなたの血圧にとって最もダメージを与えることになるのです。