寿命延長の切り札となるか遺伝子「テロメア」の役割とは

テロメア(telomere)とは、ギリシャ語で「末端部分」を意味します。テロメアは遺伝子情報をつかさどる「染色体」の末端部分に位置する構造体です。

一見無意味な配列のようでもあり、見方によっては単なる遺伝子の切れ端なのですが、実は最近の研究によるとテロメアが存在する意味は大きく2つあります。

その一つは

「その遺伝子が(裂傷や感染ではなく)正常に分裂したものであるという印」

であるということです。

染色体が物理的な理由で途中で途切れたり、割れたりした場合とか、あるいは異常な変質が起こって正しい情報が保てなくなった場合、その遺伝子構造の末端には正常なテロメアが見られません。

そのような異常な染色体が存在することは細胞にとって重大な問題です。そして当然、そのような誤った遺伝子情報が細胞分裂を繰り返して増殖してしまうことは人体にとっても重大な問題を引き起こすでしょう。

よって、このような破損、変質した染色体は免疫系によって分解あるいは修復されることになるのですが、その判別を可能にしているのがテロメア構造だということです。

テロメアが「寿命」を作り出す

そして、テロメアの持つもう一つの役割は、いわば

「細胞分裂の回数に制限を与えること」

なのです。

私たちの体は、細胞がどんどん分裂していくことで成長し、機能が維持されているわけですが、もしその細胞分裂が無限に行われるのだったらある意味、不老不死の状態でいられることになります。

しかし、実際には細胞の分裂回数には制限があるのです。

染色体の両端に存在するテロメアは、細胞分裂するごとに少しずつ短くなっていきます。そのため、それが分裂の回数を決める「鍵」のような役割を持つと考えられています。

そして、テロメアの長さがだいたい最初の半分くらいになった時点でその細胞は分裂をやめてしまうのです。

あとは老化し消滅することになります。

それはまるで、自分から寿命を決めているかのような働きに見えます。

なぜ細胞分裂を制限する必要があるのか

どうしてわざわざそんな働きが必要なのか……有力な説は、細胞分裂を何度も繰り返すと次第に遺伝子情報の伝達が狂う確率が上がっていきます。それは書類をコピーのコピー、そのまたコピーと繰り返していけばだんだん画質が落ちていくような感じですね。

遺伝子情報が狂った細胞が増える……それは、言い換えればたとえば「がん」が発生する確率が上がるということです。あるいは各器官の正常な機能や連携が保てなくなってしまうということです。それを細胞レベルであらかじめ防止しようとすることこそテロメアによる分裂制限の意味なのです。

寿命延長の鍵は遺伝子情報の保存と伝達ミスの撲滅

この理屈で考えれば、細胞分裂の際の遺伝子情報の「ミスコピー」さえなくせば、人間の体は半永久的に老化もせず死に向かう必要もなくなるということになります。

現代の医学、科学の進歩を見ていると、遺伝子情報を解明し、ミスコピーを防止するか、あるいはミスが起こった遺伝子を人為的に修復したり除去したりすることも、考え方としては難しくはないようにも思えますよね?

もちろん、その技術を実現するには、それは私たちが頭で想像するほど容易なことではないでしょうが、少なくとも何となくイメージはできるでしょう。とすると、将来的にはそのようなテクノロジーが実現することもまったくの夢ではないのかもしれません。

いつか、人間が何百歳、何千歳と生き続ける……まさに神話のような時代がやってくるのでしょうか?

いいえ、一部の研究者の中には、その実現は、実はそれほど遠い未来の話ではないかもしれないと考えている人もいるようです。

私はその人に心から言いたい。

「研究、頑張ってください!」